傘とこの人は私にとって大切なものなんだ。
だから痛いけどがまんしよう。
そして終わったら聞こう。
私は一体誰なの?
センスが悪いと文句を言いながらも大切にしてくれた。
ある日風に飛ばされた傘を追いかけた妹は車に撥ねられ命を落とした。
だからここにいる少女が妹のはずはなかった。
そうだ、こいつはきっと――
今ひどいことをされているから?それもあるけど、それとは別の―――
私はこの人を知っていた。
私は傘ともう一つ大切なものを探していた。
私が一番好きだった人を探していた。
この人は
私は
俺は妙な罪悪感に囚われていた。当然今俺がやっているのはいけないことだ。だがそれとは別の―――
なぜこの少女は毎日この場所で傘を捜していたのか。
なぜそんな状況を自分以外の誰も気に留めなかったのか。
なぜこの傘を自分のものだと言い張っていたのか。
これは俺の妹の傘だった。
数年前に亡くした妹の。
くるしいよ
くるしくなってきた。
ちょっと変なにおいがする。